第108回『まちむら興し塾』 
  2014年6月19日 東洋大学 1号館
  テーマ 東京スカイツリーがもたらしたこと
  コメンテーター 
   株式会社JTB総合研究所 客員研究員 松井一郎 様
 

 東京スカイツリーがもたらしたこと

Wikipediaより
 108回『まちむら興し塾』動画
 1.目的

 
〇 東京スカイツリーを事例として、集客施設が周辺地域に与える影
 響のあり
方を把握し、地域振興への利・活用の方策を検討する。

 2.課題
 〇 営業開始後2年を経過したが、電波塔(東京スカイツリー)の展
 望台を核
とする東京スカイツリータウンとして検討することが必
 要であるが、展望塔
と商業施設(ソラマチタウン)の経営母体が
 異なること、経営数値や来場者
の調査が非公開であることから定
 量的な検討が不十分となった。
 3.進め方

 〇 定量的な検討を行うための数値は、ニュースリリースなどから把
 握すると
ともに、各方面へのヒアリング調査で補足する。

 定性的な検討は現地での観
察調査で把握し、周辺地域の情報を収
 集・整理するための実地調査(実踏調
査)を行う。

 〇 今回実施したこと

 @)既存資料の活用(収集・分析)
   インターネット(HPなど)、パンフレットなど

 A)聞取り(ヒアリング)調査
   東京スカイツリーの運営会社、はとバス

 B)実地調査
   東京スカイツリータウンおよび周辺地域(図参照)

 4.東京スカイツリーができるまで
 
      〜 インターネットから 〜

   2003.12 在京6社「(600m級の)新タワー推進プロジェク
       ト」発足

   ★ 誘致に名乗りを上げた地区
    (さいたま市、港区、練馬区、新宿区、台東区、足立区、
     千代田区)

 2004.12 墨田区等が東武鉄道に協力要請

 2005.12 「墨田・台東新タワー誘致推進連絡会」

 2006.03 新タワー建設地として最終決定

    .05 東武鉄道の出資により「新東京タワー株式会社」設立

 2008.06 新タワーの名称を「東京スカイツリー」に決定
        会社の名称を「東武タワースカイツリー株式会社に
       変更

    .12 基礎工事完了

 2009.08 高さ100mに到達
        最高点634mに決定

 2010.03 東京タワーを超える

    .09 「東武タウンソラマチ株式会社」設立

 2011.03 東日本大震災(建物に影響なし)、634mに到達

    .06 開業日、展望台入場料金発表

 2012.02 竣工(2ヵ月遅れ=大震災後の点検のため)

    .05 開業(0523

 2013.12 展望台入場者1,000万人に到達

 ● 東京スカイツリータウン内の施設
 ● 東京スカイツリー周辺マップ
 
 5.東京スカイツリー開業2年目の状況
 (1)開業以来の集客状況

    東京スカイツリーを囲むエリアにある集客施設は、
    ≪スカイツリーの展望台≫、

      SC:そらまちタウン≫、
    ≪すみだ水族館≫、
    ≪プラネタリウム:天空≫などがある。

    これらを総称して東京スカイツリータウンと呼んでいる。

    そのうち、電波塔であるスカイツリーの展望台と付帯する
    施設(スカイツリーショップなど)は東武タワースカイツ
    リー株式会社
が管理・運営にあたっている。

    ≪そらまちタウン≫はテナントショップを集めたSCであり
    水族館(オリックス)もプラネタリウム(コニカミノルタ)
    もテナントのひとつである。

     このSCを管理・運営しているのは東武ソラマチタウ株
    式会社
である。

   そのような事情から、そらまちタウンへの来訪客、水族館や
   プラネタリウムの来場者などの動向は把握していない。
   うわさではあるが、それぞれ順調にきていると聞いている。

    展望台への来場客数は原則として公表していない。
   GWや年末・年始などは取材のにため、公表されることもある
   が、日別・月別・年間の数字を定期的に公表することはない。

   12522日(開業日)から13521日までの1年間
   の来場客数は638万人であり、20131年間の来場客数は
   約600万人である。

    開業人気と言えるのか、季節性なのかは不明であるが、12
   年12月あたりからは平日の来場者、特に、火〜木は待ち時間
   が510分程度と短くなっているが、週末や祝日は相変わら
   ずの状況である。

    台風の影響などでエレベーターが全日ストップした日は少
   ないが、時間帯によってストップすることは時々あった。
    停止するのは風速だけで決めているわけではなく、天候状
   況、風向、瞬間最大風速(突風や不安定な気流など)も配慮
   している。

 (2)客層(居住地域、行動、同行者タイプ、訪日旅行者)
    
  ・団体客
    開業初期は団体予約の枠を絞めていたこともあって、70%
   が首都圏からの個人客で、地方からは団体を中心として30%
   
うち修学旅行などが20%、メディアなど一般募集が10%
   あった。

    最近は、セールスの成果と考えているが、平日を中心地方
   からの団体が40%近くまで増えている。
   パッケージやメディアツアーは週末が多くなることもあって
   やや増えているといった程度である。

  ・個人客
    個人客では、GW・夏休み・正月はファミリー(三世代も含
   む)、平日はシニアのグループが多い。
   若い人たちも少なくはないが、中核マーケットにはなってい
   ない。
    ただ、金・土曜日を中心とした平日の夕方以降の時間帯に
   はカップルも目につく。

  ・外国人
    目立つほどではないが、45%はいると考える。数は明確
   ではないが、60ヵ国以上の広範囲から来場している。
    100
ヵ国以上からの来訪客があるという浅草との関連性は
   あるかもしれない。

  ・訪日外国人マーケットへの対応
   2013年は台湾を主要なターゲットとして、観光展への出展
   やセールスを展開した。

  ・来場客への調査1回だけ実施したが、ほとんど活用されて
   いない。

 ・団体は予約制なので、個別に把握できている。

  団体旅行については、バスの駐車時間を2時間までとしている
   ため、滞留時間は2時間、展望台に1時間、ショップに1時間
   弱となっている。

 ・個人来場者の客層、行動様式・ニーズの所在は狭い空間なの
   で、スタッフが十分に観察調査できる。

    個人客の滞留時間は展望台には1時間30分〜2時間が普通
   であるが、飲食施設を利用してのんびりする人も多い。
   展望台の後はショップやソラマチタウン、水族館、プラネタ
   リウムに立ち寄る、オープンエアで撮影するなど
   バラバラである


 (3)マーケティング活動
   (イベント、新規アトラクションの導入を含む)
 
   個人に対する宣伝活動は経費面から増やすことはできないし
   それほど重視していない。現時点では実施する予定もなく、
   情報発信は広報活動とネットを中心に行っている。

  ・展望台ではイベントを展開する余地は少ない。
   元旦の初日の出、隅田川の花火の時は付加的なサービス付き
   の特別チケットを販売している。
    定員は約900人で、両方とも完売した。

   正月には「温故知創のお正月」をテーマとして、展望台の窓
   飾りつけ、金屏風の撮影スポットなどをしつらえた。

  ・スカイツリーのライティングは
   展望台のイベントというよりも東京スカイツリータウンへの
   集客、広報効果などを考えて実施している。

 ・これと同様に活用されているスペースがスカイアリーナ広場
   で、スカイツリーの足元、4Fにあり、自社主催のイベントを
   開催したり、他社主催のイベントへのスペース貸しをしたり
   している。
    1
月下旬から3月まで、このスペースは日清製粉が主催す
   るアイススケート場になる

  ・旅行会社へのセールス活動は活発にやっている。
   最近の傾向として一般団体は減っているので、特に、修旅に
   力を入れている。
    現状では順調に送客されていると考えている。

   もちろん、グループ旅行会社である東武トラベル、トップ
   ツアーとの連携は大切であるが、他の有力な旅行会社、地域
   的に強力な旅行会社へのセールスも欠くことはで きない。

  ・競合として意識しているものはない。
    東京タワーやサンシャインなどの展望台とも立地や周辺環
   境が違いすぎる。東京スカイツリータウンの核施設として独
   自性をもって運営していく。

  ・アクセス
   スカイツリータウンからは東京駅、上野駅、羽田空港などへ
   のシャトルバスがあるが、路線のひとつに東京ディズニーリ
   ゾートへのシャトルバスがある(大人片道:700円)。

   0700頃から2200頃迄、概ね1時間に1回、1日19
   復運行されており、時間帯にもよるが、一応の利用者数は確
   保していると聞いている。

   2013年は東京ディズニーランドの30周年もあって多かった
   かもしれない。
    先述した展望台、TDR、秋葉原・原宿・台場などの賑わい
   エリアも含めて、競合というよりも「東京エリアの魅力向上」
   を担う仲間と考えている。

 (4)1年目と2年目の相違と2014の見通し 
 
   1年目は開業人気ととらえている。2年目に入った2013
  年も、少しは落ち着いてきたとは言え、幾分かはその人気が
  残っていたと考えている。先述のように、平日の個人客が落
  ちてきており、その分をカバーしたのは団体客である。 

   客層や来場客の行動様式はまだ変わっていない。
  逆に言えば、今後、こちらから新しい展望台での過ごし方の
  提案を示していけるのではないかと考えている。

   消費税率が引き上げられる4月以降、しばらくは厳しいかもし
  れない。20145月には3年目に入るので新鮮味が薄れてくる。
   首都圏マーケットを中心とするリピーターを引き付けておく
  ための施策の展開、地方の旅行会社へのセールス強化、訪日マ
  ーケットでは台湾に加えて香港をターゲットとしていく。

   いずれにしても、週末はまだ大丈夫だと考えているので、平
  日、特に、火〜木の集客がカギになると考えている。

   ハードの部分、展望台自体は変更できないので、正月に実施
  したような飾り付けや飲食のメニューで季節感を出すようなア
  イデアを加えていきたい。

   普通の行楽シーズンに左右されるところがあり、冬期の集客
  が弱い。

   実のところ、12月〜2月は晴天のことが多く、空気も澄んで
  いるので、展望施設は最も魅力的なシーズンである。
  夕景、夜景はもちろんのこと、時間帯によって感じられる景観
  が異なることなど、新たなアピールを考えていきたい。


 6.周辺地域との関係 
 (1)東京スカイツリーへの期待と不安
  @)誘致活動の関係者
    ★押上駅・業平橋駅周辺地区の地権者
      ⇒「まちづくり協議会」

    ★墨田区および地元関係者
     (地域の経済団体、地元商店街など)

    ★東武鉄道⇒貨物事業のヤード跡地の活用

  2004年 地権者が協議会を発足させ、誘致活動を始める。  
       墨田区も東武鉄道に協力を要請する。

 (2005.01) 地元関係者が「新タワー誘致推進協議会」設立

 (2005.02) 東武鉄道が事業への取り組みを表明

 (2005.03) 周辺地区の都市計画決定

 (2005.03) 放送事業者が第1候補地に認定⇒協議開始

  2006.03  新タワー建設候補地として最終決定

 「新タワーによる地域活性化等調査」報告書
   ⇒タワー 552.4万人、タウン 2,907.9万人

 A)懸念材料


   ◆台東区との連携        
   ◆周辺景観との調和

   ◆雪氷の落下          
   ◆電磁障害

   ◆周辺地域の交通混雑  
   ◆商業施設による周辺商店街への悪影響


 (2)新たな観光資源
  
    東京スカイツリータウンの集客力との相互依存による観
   光資源が創出されている。

  ★北十間川を活用した遊覧船
   ⇒≪がれおん≫による下町探検クルーズ(3コース)

  ★周辺商店街の集客努力による変化
   ⇒おしなり商店街振興組合(シンボルキャラ=おしなり君)

 (3)周辺の商店街

   ・20087月に「押上・業平橋地区活性化協議会」を立ち
    上げ、東京スカイツリ
ータウンとの共栄を目指す。

   ・2009年にはタワーの工事が進み、周辺から一部が見える
    ようになってきたことから来訪者が増えた。
     周辺を散策する来訪者に対応するため、シンボルキャラ
    クター≪おしなりくん≫を設定し、新タワー予定地の南側
    に「おしなりくんの家」を造って休憩所とした。

   ・2010.03 建設中の新タワーが東京タワーを超えた
     マスメ
ディアが取り上げるようになった。

    来訪者はさらに増加し、周辺の商店街にも来訪者が流れる
    ようになった。振興組合は新商品の開発も進めて、来訪者
    の取り込みに成功した。


   ・東京スカイツリータウンの開業を控えて、タウンの外への
    流れが止まることを考慮し、タウン側からもソラマチ商店
    街への出店を勧められたが、賃料の折り合いがつかず、出
    店を断念した。

 東京スカイツリータウンの営業開始後は、不安視されてい
 たとおり、タウン外への流れは少なくなっている。
 この傾向を覆すことが大きな課題として残っている。


 7.積み残したこと 
   

   〇 資料等、判断に必要なデータが不足しているため十分な分
    析ができていない。

下記のような補足調査が必要である。

   @)墨田区産業経済部が2006年に実施した調査報告書の読
     み込み

   A)おしなり商店街振興組合へのヒアリング調査

   B)東武ソラマチタウン株式会社へのヒアリング調査

   C)ソラマチタウンのテナント組合へのヒアリング調査

   D)東京スカイツリータウンの観察調査(平日、休日)

 
 建設までの経緯、開業後の状況、今後の見通しなどなど、裏話
 を交えて非常にていねいな解説で、分かりやすく、納得の講座。

 皆さんからは、また、行ってみた〜いとの感想でした。

勉強会風景
参加者全員で記念撮影
後列左から長坂、初参加久津さん、初参加石井さん、上松さん、
樋口さん、4年木村君、鈴木さん、4年山田君、4年野口さん、
3年根岸君、前列 3年宮林さん、コメンテーター松井さん、
久しぶり参加3年原屋君
 
コメンテーター松井さん 松井さんと4年生3人
石井さん、上松さん、久津さん 樋口さん、松井さん
 初参加 久津さん  3年生 3人
   
初参加 石井さん 上松さん
司会役 樋口さん 鈴木さん
4年 山田君  4年 木村君 
4年 野口さん 3年学生幹事 宮林さん
久しぶりの参加 3年原屋君 3年 根岸君
お楽しみ 二次会 白山駅近くの串焼き屋で 

参加者8人で盛り上がりました 
 二次会の会費はワリカン
学生はいつも1000円。しかも飲み放題 
   
野口さん、山田君、松井さん  野口さん、山田君 
   
原屋君、いつも幹事役樋口さん  今日は深刻そうな話? 
   
木村君、根岸君、原屋君、樋口さん  松井さんと長坂 
 
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